「ツバメ(燕)」は、ツバメ科ツバメ属に分類される鳥で、古くは「ツバクラメ」あるいは「ツバクロ」と呼ばれた。
ツバメの全長は約17cmで、北半球の広い範囲に分布し、日本では沖縄県でも見られる。脚は短く歩行には不向きで、巣材の泥を求める時以外は地面に降りることは滅多にない。
そんなツバメは人の家の軒先に巣を作ることが多い。動物にとって人間は脅威の存在であるが、その脅威を逆手にとって暮らしているのがツバメである。ツバメは人の近くに巣を作ることで安全が確保される。
そもそもツバメはフィリピンやインドネシアなどの東南アジアから数千キロの海を渡って日本にやって来る。ツバメにとって日本は繁殖に適した場所で、春になるとハエや羽アリなどの小さな虫が大量に発生する。その虫を雛(ひな)に食べさせて雛を育てている。
春はツバメの子育ての時期で、ツバメの巣では親ツバメが雛に餌を与える姿が見られる。ツバメがあえて人の近くに巣を作るのは、「天敵のカラスやヘビを避けることが出来るため」である。
ツバメの天敵であるカラスやヘビは、人間を恐れて民家にはほとんど近付いてこない。そのため、ツバメは人の気配がある場所に巣を作れば、天敵から襲われずに済む。ツバメは一度巣作りをして安心だと感じると、翌年も同じ場所にある巣を修復して使うという習性がある。そして、たどり着いた安住の地が民家の軒先だったというわけである。
また、人間にとってツバメは農作物を食べずに害虫だけを食べてくれる「益鳥(えきちょう)」であり、古くから大事にしてきた。その歴史は古く、奈良時代の和歌集『万葉集』において、ツバメは春の訪れを告げる鳥として書かれている。
さらに、江戸時代の百科事典『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』には、ツバメが人の家の近くに巣を作ると解説されており、昔から日本人の身近な存在だったことが分かる。いつしか、ツバメが巣を作る家には幸せが訪れるともいわれ、ツバメは縁起がよい鳥として知られるようになった。
2020/5/10
カテゴリー「生き物」