「釘を刺す(くぎをさす)」とは、「後で言い逃れが出来ない様に、または間違いが起きない様に、あらかじめ念を押す」という意味の言葉である。
神社仏閣の建築や補修に携わる日本の宮大工は、釘や接着剤をほとんど使わない伝統的な建築技術を持ち、その技術は海外からも高く評価されている。継手(つぎて)や仕口(しくち)と呼ばれる技術は、二つの木材を組み合わせて接合する木組みで、建物にしなりを生み、地震に強い構造となる。
釘をほとんど使わないと書いたが、実は日本の伝統的な建築においても釘を使うことはある。ただし、その釘は現在主に使われる軸の断面が円形の「洋釘」ではなく、軸の断面が四角形の「和釘」である。
鎌倉時代から、その和釘を重要な場所に念のため使用した。和釘はあらかじめ開けた穴に刺し込む形で使われるため「釘を刺す」と表現する。「釘を刺す」という言葉は、江戸時代の中期から使われるようになったとされる。その一方で、釘を打ち付けて固定するところから、「釘を刺す」と同じ意味で「釘を打つ」という言葉もある。
なお、和釘は法隆寺や東大寺、伊勢神宮にも使われている。しかし、鉄で出来た釘は錆びるという欠点があり、木材の寿命を短くするため、多くは使用されていない。
また、職人の手により丁寧に造られる和釘は高い品質を誇り、錆びにくいという特徴を持つが、造るのに費用が掛かるのも事実である。そのため、現在では和釘は神社仏閣や城郭などの歴史的な建築物の修理・復元に主に使用されている。
2020/5/26
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