「盗人の昼寝(ぬすびとのひるね)」とは、「一見、何の目的もなさそうに見える行為にも、それ相応の思惑や理由があることの例え」として使われる言葉である。
「盗人」は「ぬすびと」または「ぬすっと」とも読む。「盗人の昼寝」という言葉の出典は、江戸時代前期の1645年(正保2年)に刊行された俳諧論書『毛吹草(けふきぐさ)』とされる。
『毛吹草』は当時流行していた俳諧の入門書のような書物で、俳諧の作法上の注意点の説明とともに、季語や句作の参考になる諺(ことわざ)などを掲載していた。有名な諺に「鬼に金棒」があり、この書によって広まったとされている。
そんな『毛吹草』に掲載されていた「盗人の昼寝」は、元々は「盗人の昼寝も当てがある」という言葉だった。江戸時代の当時、盗人つまり泥棒が仕事をするのは夜の間であり、その夜に備えて昼寝をしていた。そこから、どんな行為にもそれなりの理由があるという意味で使われるようになった。
現在ではあまり使われない言葉だが、江戸時代後期に作られたとされる「江戸いろはかるた」では、「ぬ」の札に「盗人の昼寝」が選ばれている。ちなみに、京都の「上方いろはかるた」では、「ぬ」の札は「糠に釘(ぬかにくぎ)」であり、この言葉は「やわらかい糠に釘を打ち込むように、手ごたえや効き目がないことの例え」として使われる。
2020/6/1
カテゴリー「語源・由来」