「無鉄砲(むてっぽう)」とは、「どうなるか先のことをよく考えずにむやみに行動すること。また、そのさま」という意味の言葉である。
夏目漱石の代表作でもあり、1906年(明治39年)に発表された『坊っちゃん』の冒頭には、「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている」という有名な一文がある。その他、「無鉄砲な人」や「無鉄砲な計画」のような使い方がされる。
「無鉄砲」という字から「鉄砲も持たずに敵地へ攻め込むような勢いだけの人やその状況」のような意味にも思えるが、実は「無鉄砲」の字は当て字である。元の言葉については諸説あるが、「無点法(むてんぽう)」や「無手法(むてほう)」に由来するという説が有力である。
「無点法」の「無点」とは「返り点や送り仮名が無い漢文」を意味する。無点で漢字だけの漢文は日本人には読みにくいことから、「無点法」は「はっきりしないこと」という意味で使われるようになった。
一方、「無手法」は「手に何も持っていないこと、特別な技法や手段がないこと」を意味する。これらの「無点法」や「無手法」の音と漢字が変化して、「無鉄砲」になったという説である。ちなみに、「無鉄砲」の類義語には「向こう見ず」「無謀」「命知らず」「恐いもの知らず」などがある。
2020/6/3
カテゴリー「語源・由来」