「しかと」とは、「無視すること、仲間外れにすること」という意味の言葉である。「しかとする」という形で使われることが多い。
「しかと」の「しか」は動物の「鹿」のことであり、「しかと」という言葉は鹿が描かれた「花札」に由来する。
花札は、日本に古くからある「かるた」の一種であり、「花かるた」とも呼ばれる。一般的に一組48枚で、各札には点数が付けられており、札の組み合わせで遊ぶ。1月から12月までそれぞれ4枚ずつ花の描かれた札があり、計48枚となる。
その花札の中で、10月の札には「紅葉(もみじ)」とともに「横を向いた鹿」が描かれている。そのそっぽを向いた鹿が人を無視しているように見えたことから、「しかと」という言葉が生まれた。この鹿の花札は10点であることから「鹿の十(しかのとお)」と呼ばれ、これが「しかとう」、そして「しかと」になったと言われている。
1957年(昭和32年)に出版された警視庁刑事部編の『警察隠語類集』には、「しかとう」は「とぼける」という意味で掲載され、「花札のモミヂの鹿は十でありその鹿が横を向いているところから」と説明されている。
その後、俗語として一部の若者の間でこの言葉が使われるようになり、「しかとう」は「しかと」になった。そして、現在では「しかと」という言葉は、若者を中心として一般の人にも使用されている。
2020/6/15
カテゴリー「語源・由来」