「後生大事(ごしょうだいじ)」には、「ものを大事にすること、後生の安楽を最も大切にすること」などの意味がある。
「古い雑誌を後生大事にとっている」「昔の服を後生大事に持っている」「恩師からの教えを後生大事に守っている」などの使われ方がされる。この「後生大事」とは仏教の言葉に由来する。
「前生(ぜんしょう)」「今生(こんじょう)」「後生(ごしょう)」の三つの言葉が一揃いである。「この世ではもう二度と会えないだろうという別れ」のことを「今生の別れ(こんじょうのわかれ)」と言うが、この「今生」とは今生きている「現世(げんせ)」のことである。
そして、「前生」は今生の前なので「前世(ぜんせ)」、「後生」は今生の後なので「来世(らいせ)」のことである。「前世」「現世」「来世」の三つの世は仏教において「三世(さんぜ)」と呼ばれる。
つまり、「後生大事」とは、元々は「来世の安楽を願って、一生懸命に修行することや信仰に励むこと」を意味する。そして、現在ではこのような宗教的な意味合いはなく、「物事をとても大切にすること」という意味で使われることが多い。
なお、人に物事を頼み願う時や許しを請う時に「後生だから」という言葉が使われるが、これは「助けてくれれば、あなたの来世のためになるから」という意味が含まれる。「後生だから」は最近ではあまり使われないが、小説などで見掛ける言葉である。
2020/7/1
カテゴリー「語源・由来」