「発酵」と「腐敗」の違いとは

微生物が酵素の働きにより有機物を分解あるいは変化させることを「発酵」と呼ぶ。発酵食品には、納豆や味噌、醤油、ヨーグルト、チーズ、キムチなどがある。

発酵食品

一方、食べ物が腐ることを「腐敗」と呼ぶ。結論から先に書くと、その微生物の菌の働きが人にとって有益であれば「発酵」、人にとって有害であれば「腐敗」と分類される。以下、その内容を確認してみる。

空気中には様々な菌が存在していて、常温の約20℃でその菌は増殖して食べ物を腐敗させる。食べ物の腐敗を防ぐために作られたのが冷蔵庫である。冷蔵庫の約6℃以下の低い温度の中では菌の増殖が抑えられ、腐敗を遅らせることができる。冷蔵庫がない時代には食べ物はすぐに腐敗してしまった。そこで食べ物を長持ちさせるために「発酵」という方法が生まれた。

「発酵」と「腐敗」はどちらも菌による現象で、同じ働きだと言える。その中で人が選んで菌を付けたものが「発酵」である。例えば、納豆の歴史は古く、約1万年前の縄文時代から食べられてきたとされる。納豆は煮た大豆に藁(わら)などに多く生息する納豆菌を付けて作られる。

その他、味噌や醤油は麹菌、ヨーグルトやチーズ、キムチは乳酸菌の働きによるもので、人が菌を付着させる。一方、腐敗した食べ物を人が食べるとお腹が痛くなる。人にとって都合の良い菌の働きが「発酵」で、都合の悪い菌の働きが「腐敗」となる。

納豆の発酵の場合、納豆菌が大豆のタンパク質などを食べ、旨み成分であるアミノ酸を作りながら繁殖する。納豆のネバネバは旨み成分のアミノ酸そのものである。このアミノ酸は人体に悪い影響はないため「発酵」に分類される。

ヨーグルトの発酵の場合、ブルガリクス菌などの乳酸菌が牛乳に含まれる糖を食べて、爽やかな風味のあるアセトアルデヒドなどを作る。ヨーグルトの発酵も人体に無害であり、お腹は痛くならない。このように人体に無害な場合を「発酵」と呼ぶ。

一方、「腐敗」は食べ物に菌が付いて増殖する過程は同じだが、その菌が人にとって有害な毒素を作るという違いがある。この毒素に侵された状態が「腐敗」である。

この腐敗した食べ物を人が食べると、その菌は体内で消化中のものを食べて毒素を作り続ける。この毒素を人の腸が感知し、毒素を体から早く排出しようと腸内に水分が分泌され、腸が細かく動く。これが「お腹がくだる(下痢)」という状態である。さらに、その腸の細かい動きは脳に痛みとして伝わり、これが「お腹が痛い(腹痛)」という状態である。

なお、「食べ物が腐る」と表現されるが、これは空気中の雑菌などの腐敗菌が食べ物に付着して、その菌が増殖した状態を指す。また、発酵した食品には腐敗菌など他の菌を寄せ付けない働きがあり、腐敗しにくい性質がある。しかし、発酵食品も時間が経つと腐敗する可能性があるため、商品に明記された賞味期限までに食べるのが良い。

リンクWikipediaコトバンク

関連記事

2020/7/12

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー「食べ物

関連記事