「生ハム」とは、豚のもも肉を塩漬けして低温で燻煙(くんえん:煙でいぶすこと)した加工食品で、作る時に加熱や煮沸を行わないのが特徴である。
生ハムはヨーロッパでは紀元前から食べていたとされる歴史ある食べ物で、腐りにくく、保存食として重宝されてきた。加熱をしていない生肉は常温で時間が経つと腐るが、生ハムは「生」なのになぜ腐らないのか。
それは「塩の力」によるものである。生ハムが作られる過程を確認してみる。まず毛を抜いて、血抜きした豚の骨付き肉を大量の塩に漬け込む。その塩の量は生ハムの原木1本につき10kgにもなる。
10日間ほど塩漬けをするが、この「塩漬け」こそが生ハムが腐らない秘密である。塩は素材の持つ水分を外に出す働きをするが、肉を腐らせる細菌やカビなどの微生物は水分がないと生きられない。つまり、生ハムには水分がほとんどなく、腐敗の原因となる微生物が増殖できないため腐らない。
塩漬けをした後には、その塩を洗い流し、乾燥させて長期熟成の工程を得て、生ハムが作られる。熟成の期間は半年から2年間ほどで、十分に熟成させることで肉の旨味が増し、美味しい生ハムになる。
中には5年間も熟成させたものがあり、原木1本が140万円もする高級な生ハムも存在する。ただし、熟成期間が5年間にもなると、腐らずに熟成できるのは全体の1%であり、希少な生ハムと言える。
ちなみに、古代エジプトのミイラも死体を塩に漬け込むことで水分を抜き、乾燥させて腐敗を防いでいる。その他にも防腐剤を塗ることで何千年も腐らないミイラが作られてきた。
2021/3/17
カテゴリー「食べ物」