「人一倍」の意味・由来

「人一倍(ひといちばい)」とは、「人の倍であること」や「普通の人以上であること」を意味する。

「人一倍の努力をした」と言うと主に「人の倍の努力をした」という意味になる。また、「寒さには人一倍強い」と言うと「寒さには普通の人以上に強い」という意味になる。

ここで不思議なのは「人一倍の努力」を「人二倍の努力」とは言わない点である。「人一倍の努力」だと「人の努力x1倍」で「人の2倍の努力」にはならないように思える。これには明治時代以降に西洋数字が用いられるようになったことが関係している。

日本では江戸時代以前においては東洋数字の定義が用いられてきた。例えば、「一倍」とは現在で言うところの「2倍」に該当する。同じく「半倍」とは現在の「1.5倍」に該当する。このような考え方は平安時代の説話集『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』(巻14第38)にもあり、利息を説明する際に「一倍」は現在の「2倍」を意味することが記載されている。

その後、明治時代に西洋文化が日本に入り、現在と同じように「一倍」は「1倍」を、「二倍」は「2倍」を意味するようになった。「一倍」が「1倍」なのか「2倍」なのか混乱しそうだが、明治政府は1875年(明治8年)12月4日に公布した『太政官布告(だじょうかんふこく)』の中で、公文書における倍数表記を西洋式に改める旨を記載しており、それまでの「一倍」の表記を全て「二倍」に改正した。

これにより公文書での「一倍」という表記は禁止され「二倍」と表記されるようになったが、「人一倍」という言葉はそのまま残り、現在も使われ続けている。このような経緯があり、「人一倍」という言葉は近代以前の用法の名残と言える。

リンクWikipediaコトバンク

2021/8/15

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