動物園がつくられた理由

今では絶滅危惧種など貴重な動物を見ることができる動物園だが、動物園をつくったもともとの理由は動物の飼育や研究ではなかった。

動物園

もともと動物園がつくられたのは「権力を見せつけるため」である。現在のような動物園が誕生したのは1700年代終わりのヨーロッパだが、人々はそのはるか昔から動物に魅了されてきた。

ラスコー洞窟の壁画
ラスコー洞窟の壁画

インドネシアにある約4万年以上前のリアン・テドング洞窟にはイノシシが、フランスの約2万年前のラスコー洞窟にはバイソンやウマ、シカなど様々な動物が壁画として描かれている。人は動物に魅了され続けてきたが、家畜としてではなく野生動物を集めて展示する現在の動物園の原型をつくった人たちがいた。

その一人が約2900年前のアッシリア王アッシュル・ナツィルパル2世だった。アッシリアは現在のシリアとイラク北部に繁栄した国。石碑に彫られた文章によるとゾウやライオンを飼っていた。さらにシリア遠征の時には戦利品としてメスザルなど征服した国の動物を持ち帰り披露していた。

その後、王族や貴族が人々に見せるために動物を飼育し展示することは世界各地で行われた。古代エジプトでもプトレマイオス朝エジプトの王プトレマイオス2世は積極的に遠征を行い領土を広げたが、自分が征服した地域から集めてきたゾウやオリックス、ダチョウ、ライオン、サイ、キリンなどでパレードを行っていた。

王族や貴族が動物を飼育し展示することは、自分の富や権力を見せつけるためだった。動物を飼育するためには多くのエサや飼育する人が必要になり、多くのお金を必要とする。さらに制圧した国の動物を持ち帰ることで強さの誇示になった。また、他国から友好の証として動物が贈呈されれば外交の力を示せる。

王族や貴族が権力を見せつけるために動物を飼育・展示するようになったのが動物園のルーツとなっている。しかし、その後に動物園が権力者から庶民のものになるある出来事が起こった。それは1789年に起こったフランス革命である。

当時、王族が暮らしていたベルサイユ宮殿では支配の象徴として敷地内で多くの動物を飼育していた。しかし、フランス革命で王がかつての権力を失うと、王族のもとで飼育されていた動物を人々の教育に役立てるという名目で、もともとあった植物園に動物のエリアを設置し、世界初の動物園が誕生した。

その動物園ジャルダン・デ・プラントでは現在の動物園のように動物を見て回る通路がつくられていた。その後、イギリスやオランダなどヨーロッパで次々に動物園が誕生し、王族や貴族など権力者の力を見せつけるための動物園は、この頃には国の力を見せつける場所になっていった。

このようにして世界中に動物園がつくられていき、もともと権力を見せつけるための場所だった動物園は、商業的な側面も含め、生きた動物の飼育や展示、研究をする場所へと変化していった。

リンクWikipedia

2025/7/22

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カテゴリー「生き物

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