世界遺産にも登録されている鹿児島の屋久島にある屋久杉は樹齢1,000年を超えており、木はとても長生きである。
木が長生きな理由は「死にながら生きている」からである。人間の寿命は長くても100年ちょっとである。人類史上最も長く生きたとされる人はフランスの女性ジャンヌ・カルマンさんで、1875年生まれで122歳まで生きた。
一方、木の寿命は1,000年を超える場合もあり、世界最高樹齢とされる木はアメリカのメトシェラ(イガゴヨウマツ)で、その樹齢は4,800年以上である。一見枯れ木にも見えるこの木だが乾燥が厳しい環境に適応した結果で、最新の調査結果でも生きている木と認められている。
人間と木でなぜこんなにも違いがあるのだろうか。その理由の一つに細胞分裂の回数に違いがある。人の体は細胞分裂により自身のコピーを作り、新しい細胞と古い細胞が入れ代わる。
しかし、細胞分裂を繰り返すと人間の設計図とも言われるDNAが傷つくリスクがある。そのため、DNAの傷を増やしすぎないようにある程度の細胞分裂を行うと分裂をやめて老化する。
一方、木の場合はこの細胞分裂が簡単には止まらない。木にも細胞分裂によりDNAが傷つくリスクはあるが、人のDNAよりも強く守られており、傷つきにくいという特徴がある。これにより木は人間よりも遥かに多くの回数の細胞分裂ができる。
つまり、木は人間よりも若い細胞を生み出し続けることができるため、人間より長く若さを保てる。もう一つ重要な点として、人は死んだ細胞を尿や便として体外に捨てる場合が多いが、木は死んだ細胞が木を支えるなど木自身を長生きさせる。木は死にながら生きている。
木の幹を輪切りにした時、中央部分の色の濃い部分は心材(しんざい)と呼ばれ、すべて死んだ細胞である。この心材が人で言う骨の役割を果たして木を支え、木は高く大きく成長できる。心材の外側にある色の薄い部分は辺材(へんざい)と呼ばれ、辺材の中でも死んだ細胞は水の通り道となる。これは人間で言うところの血管に相当する。
一般的には木の90%以上の細胞が死んでいるとされる。死んだ細胞はエネルギーが不要であり、木は圧倒的に少ないエネルギーで生活しており、死んだ細胞を骨や血管として有効に活用するのはエネルギーの節約になっている。
その他にも、木には人間で言うところの脳や心臓のような失ったら困る急所がない。そのため、倒れた木から新しい芽が出て復活を遂げるなど人には真似できないことも可能であり、木が長生きできる秘訣にもなっている。
リンク:Wikipedia
2025/7/26
カテゴリー「生き物」