1825年(文政8年)のこの日、江戸の中村座で四代目・鶴屋南北(つるや なんぼく、1755~1829年)作の歌舞伎狂言『東海道四谷怪談』が初演された。
『東海道四谷怪談』(とうかいどう よつやかいだん、通称『四谷怪談』)は、「四谷左門の娘・お岩が、夫・田宮伊右衛門に毒殺され、幽霊となって復讐を果たす」という話で、江戸の町に実際に起こった事件をモデルにしている。
怪談の定番とされ、鶴屋南北の歌舞伎や三遊亭圓朝(さんゆうてい えんちょう、1839~1900年)の落語が有名であり、また映画化やテレビドラマ化もされていて、様々なバージョンが存在する。
四谷怪談の舞台となったのは江戸の雑司ヶ谷四谷町(現:豊島区雑司が谷)である。現在の新宿区にあり四谷に接する左門町には於岩稲荷田宮神社と於岩稲荷陽運寺が、道を挟んで両側にある。また、中央区新川にも於岩稲荷田宮神社がある。これらの寺社はお岩さんを祀っており、「お岩稲荷」などと呼ばれる。
上の画像は江戸時代末期の浮世絵師・歌川国芳(うたがわ くによし、1798~1861年)の作品で、東海道四谷怪談を表現した『神谷伊右エ門 於岩のばうこん』である。
四谷怪談を描いた絵画は他にもあり、江戸時代の浮世絵師・歌川豊国(うたがわ とよくに、1769~1825年)の『東海道四谷怪談』や、同じく江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎(かつしか ほくさい、1760~1849年)の『近世怪談霜夜星』挿絵などがある。
この日7月26日に初演された鶴屋南北作の歌舞伎狂言『東海道四谷怪談』は全5幕。南北の代表的な生世話狂言(きぜわものきょうげん、当時の町人の生態を描いた現代劇)であり、怪談狂言(夏狂言:夏季に行われた歌舞伎興行)。
物語の中では、お岩が毒薬のために顔半分が醜く腫れ上がったまま髪をすき悶え死ぬ場面や、お岩と小平の死体を戸板1枚の表裏に釘付けにしたのが漂着し、伊右衛門がその両面を反転して見て執念に驚く場面、蛇山の庵室で伊右衛門がおびただしい数の鼠と怨霊に苦しめられる場面などが有名である。