「差し入れ(さしいれ)」とは、「ねぎらいのために飲食物などを届けること。また、その品物」を意味する言葉である。
「差し入れ」という言葉は、現在では仕事を頑張っている人に激励の目的で渡すお菓子や弁当、飲み物などを指すことが多いが、元々は特殊な場所で使われていた。その特殊な場所とは、刑罰に服することになった人を収監する刑務所や監獄である。
明治時代の監獄には、扉に食事などを入れる隙間があり、その隙間から物を入れることを「差し入れ」と呼んだ。さらに「差し入れ」は、収監されている人へ家族や知人から衣類や書物などを贈ることを意味するようになった。
現在は廃止されているが、1908年(明治41年)に制定された「監獄法」の説明文にも記載されていた言葉である。そんな「差し入れ」という言葉は、監獄の扉にある隙間から差し入れて、飲食物などを届けたことに由来する。そして、同じく明治時代、芸者や芝居小屋の役者などがこの言葉を使い、一般に広まっていったとされる。
なお、「差し入れ」と似た言葉に「土産(みやげ)」があるが、「土産」はその文字通り「土地の産物」という意味で、元々は「どさん」または「とさん」と読んでいた。「みやげ」の語源については諸説あるが、人にあげる品物をよく見て選ぶ時に見上げることから「見上げ(みあげ)」と呼ばれ、これが転じたという説がある。
関連する記念日として、3月4日は「さ(3)し(4)いれ」(差し入れ)と読む語呂合わせから「差し入れの日」、3月8日は「み(3)や(8)げ」(土産)と読む語呂合わせから「みやげの日」となっている。
2020/7/13
カテゴリー「語源・由来」