ピアノの鍵盤が白と黒の理由

現在、一般的なピアノの鍵盤の色は白と黒であり、その数は白鍵(はっけん)が52、黒鍵(こっけん)が36の計88鍵である。

鍵盤が白と黒のピアノ
鍵盤が白と黒のピアノ

ここではピアノの鍵盤が白と黒になった理由について確認してみる。そもそもピアノの鍵盤が白と黒なのは、ひと目で音の場所が分かるようにするためである。全ての鍵盤が同じ色だと、半音高い鍵盤が見えにくくなる。そのため、対極の白と黒が使われるようになった。

14世紀頃に生まれたクラヴィコードと呼ばれるピアノの前身の鍵盤楽器は、もともと白く塗られた薄い板と、黒に近い色味の木材である黒檀(コクタン)が使われていた。しかし、白い板は弾いている間に黄ばんだり、黒ずんだりするという問題があった。

そこで、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach、1685~1750年)やゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(Georg Friedrich Händel、1685~1759年)が活躍した17世紀から18世紀のバロック時代には、白い板の代わりに象牙(ぞうげ)が使われた。

こうして、象牙で作られた白い鍵盤と、黒檀で作られた黒い鍵盤のピアノが誕生した。しかし、象牙は貴重なものであり値段が高く、また重い、量産ができないという特徴があった。象牙を使ったピアノはとても高価なものであり、お金持ちしか手にできない楽器になってしまった。

鍵盤が黒と白のピアノ
鍵盤が黒と白のピアノ

そんな中で、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart、1756~1791年)が活躍した18世紀後半に、安い黒檀を多く使用するために、黒鍵と白鍵が現在とは逆のピアノが作られ、これが主流となっていった。その後、なぜ更に色が反対になり、現在のような白と黒のピアノになったのか。

それは上流階級の裕福な人たちの見栄(みえ)によるものだという説があり、自分たちの裕福さをより強調するために、白くて高価な象牙を多く使用したピアノを買い求めた。ただ単に見えやすいだけであれば、黒と白のピアノでも問題なかったが、お金持ちの見栄で白と黒のピアノが普及したというわけである。

その後、20世紀になると貴重な象牙の代わりに、白いアクリルなどの合成樹脂を使用した鍵盤が誕生した。更に、1975年のワシントン条約で象牙の国際取引が禁止され、象牙を使用したピアノが作られることはほとんどなくなった。

リンクWikipedia

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2020/7/2

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カテゴリー「歴史・文化

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